論文検索や内容の理解は研究活動において非常に重要な工程ですが、非常に時間がかかったり、抜け漏れが生じたりという悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
近年、ChatGPTをはじめとして生成AIによる要約などが一般的になりつつありますが、研究の世界でもAI技術を活用した論文検索AIツールが登場し、従来の検索よりもスピーディーかつ精度の高いリサーチが可能になっています。
そこでこの記事では、論文検索AIツールの中でも無料版が存在したり、日本語対応されていたりと、使いやすさ・始めやすさに定評のある論文検索AIツールを4つ厳選してご紹介します。
研究者や学生だけでなく、ビジネスリサーチにも活用できる最新のAIツールを厳選しました。
こんな方向けの記事
・効率的に学術論文を調査したい研究者や大学院生の方
・論文検索に時間がかかりすぎていると感じており、リサーチ業務を効率化したい方
・AIを活用した最新の論文検索ツールに興味があるビジネスリサーチャーの方
この記事の結論
論文検索AIツールを活用することで、従来の検索では見つけられなかった関連論文を簡単に発見できる
特に「どのツールを使うべきか迷う」という方には、以下の2つがおすすめです。
SciSpace:日本語での対応や、検索以外の論文執筆・情報整理などをオールインワンで行いたい方
Elicit:無料で何度もAI検索を行いたい方
論文検索AIとは?効率的なリサーチの鍵
論文検索AIは、人工知能の力を活用して学術論文や研究資料を瞬時に検索し、関連する情報を抽出・整理するツールです。
従来の手動検索と比べ、検索スピードが圧倒的に速く、関連研究の見逃しも少ないのが大きな特徴です。
論文検索AIおすすめ4選 — 日本語対応や無料対応版などを厳選
SciSpace — オールインワンの研究支援プラットフォーム

おすすめポイント |
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論文の検索から執筆準備まで一気通貫でサポート |
Copilot機能でPDF内の図表やデータも解説 |
PDF解析とAIチャットで難解な論文も即理解 |
日本語対応で、英語論文も和訳・要約が簡単 |
有料プランでGPT-4クラスのCopilotを利用可能 |
SciSpaceは、研究のあらゆるプロセスを一気通貫でサポートするオールインワンのAIプラットフォームです。
以前はTypesetという論文フォーマット編集サービスでしたが、現在は文献検索、PDF解析、論文執筆支援まで研究活動に必要な機能を幅広くカバーしており、論文の検索から読解、情報整理、さらには執筆準備までこれ一つで完結します。
SciSpaceの強み・特徴
- ①オールインワンの研究支援
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SciSpaceは、文献検索から読解、執筆まで一貫してサポートします。
論文を見つけて読むだけでなく、Copilot機能を使って内容を理解し、そのまま引用管理や執筆作業に移れるのが大きな強みです。
複数論文の内容要約に加え、論文執筆をサポートする機能が存在する 日本語での質問にも対応しており、要約も日本語で出力されます。
また、執筆サポート機能も存在しており文章の補完やボタン1つでの引用の挿入など、論文執筆のスピードを上げる機能が充実しています。
執筆が終了したのち、wordファイルにエクスポートすることも可能です。
- ②PDF読み取りと対話機能
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アップロードしたPDF論文をCopilotが解析し、チャット形式で質問可能です。
「この図は何を示しているのか?」「結論部分の要約を教えて」など、対話形式で深く理解できます。
- ③日本語対応の充実
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約70言語に対応し、一部日本語でのインターフェース利用が可能です。
質問も日本語で行えるため、英語論文の和訳・要約もスムーズです。
日本語対応の範囲
SciSpaceは約70言語に対応しており、日本語表示も可能な部分もあります。

また、Copilotへの質問も日本語で行えるため、英語が苦手な方でも英語論文の理解がスムーズに進みます。
和訳や要約も瞬時に行われ、言語の壁を感じにくい設計になっています。
アカデミック関連のツールは英語のみ利用できる場合も多いため、日本語に対応している部分があることは一つの強みと言えるでしょう。
無料プランと有料プランの違い
SciSpaceは、無料プランでも基本機能を利用可能ですが、検索回数や使えるAIモデル、エキスポート等に制限があります。
なお、無料プランはサインアップのみで利用可能であるためクレジットカード登録は不要です。
有料プランは2種類あり、Premiumプランでは月額$20(年契約で月$12)で全ての制限が撤廃され、AIモデルもCopilotもGPT-4クラスにアップグレードされます。
また、Advancedプラン月額$90(年契約で月$70)では「Deep Review」機能を利用できるようになり、より高い網羅性や精度が実現されます。
Consensus — 複数研究の総意の把握に最適

おすすめポイント |
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2億件以上の査読付き論文をデータベース化し、信頼性の高い情報が得られる |
Consensus Meterによる賛否の割合が一目でわかる |
質問に関連する論文の要約を瞬時に表示 |
無料プランでも検索は無制限で利用できる |
有料プランでGPT-4モデルを利用した高精度な解析が可能 |
Consensusは、学術論文に特化したAI検索エンジンです。
NASAやハーバード大など非常に多くの研究機関・企業で利用される信頼性の高いサービスですが、以下のような強みを持っています。
Consensusの強み・特徴
- ①信頼性のあるエビデンス
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査読済みの論文のみが対象であり、かつ2億件以上の論文を検索対象としているため、信頼性のある情報を取得可能です。
また、論文を保有するデータベースも毎月更新されているため、リアルタイム性にも強みがある。
- ②関連論文から、肯定的意見・否定的意見の割合を出力できる
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例えば、「リモートワークは生産性向上に有効か?」という問いに対し、肯定的な論文・否定的な論文の割合を出力する合意メーター(Consensus Meter)という機能があります。
Consensus Meterにより、ある意見に対しての肯定・否定的意見の割合が出力される 上記のように、割合が視覚化されることでどの結論が多くの研究者に支持されているかを瞬時に把握することに繋がります。
- ③要点把握の迅速化
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質問に対する要約回答と主要論文リストを同時に得られるため、個々の論文に当たる前に全体傾向を短時間で把握可能です。
単に要約を出力するだけではなく、根拠となる論文が一目で分かる 要約に関しても、どの論文がエビデンスとなっているのかが一目で分かるようになっているため、個々の論文にもアクセスしやすくなっています。
日本語対応の範囲
Consensusは基本的に英語のみ対応です。
検索窓に日本語を入力すること自体は可能ですが、適切な結果が表示されなかったり、要約・集計機能が動作しない場合があります。
そのため、日本語での検索を行う場合は事前に質問文を英訳してから入力することが推奨されます。
無料プランと有料プランの違い
Consensusは、無料プランでも学術論文の検索が無制限に利用可能ですが、AIによる要約機能(Summary)と合意メーター(Consensus Meter)は月3回までの制限があります。
有料プランは月額$9.99(年契約で月$7.99)で、要約・合意メーターが無制限となります。
Elicit — 文献レビューの効率化に特化したAIアシスタント

おすすめポイント |
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Semantic Scholarのデータベースを活用し、学術論文を迅速に検索 |
関連する研究論文の要約を瞬時に生成 |
研究の重要項目(サンプルサイズ、データの測定基準など)を表形式で整理 |
キーワードの完全一致だけでなく、AIが文脈的に関連する論文を調査してくれる |
無料プランでも検索クエリは無制限で利用できる |
Elicitは、学術論文の網羅的な検索に強みを持つAIアシスタントです。
無料プランでは検索回数に制限があるサービスがほとんどの中、Elicitは無料プランでも「検索回数が無制限」という特徴を持ちます。
Elicitの強み・特徴
- ①学術論文に特化した検索
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検索結果に表示されるのは、査読済みの学術論文のみです。
学術文献検索サービスであるSemantic Scholarのデータベースを活用しているため、ブログ記事やニュース記事は含まれない、ノイズの少ない検索結果を提供します。
- ②関連論文の要約と比較が簡単
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Elicitは、検索結果の論文を表形式で整理する機能があります。
例えば、「リモートワークは仕事の生産性を高めるか?」という質問に対して、以下のように「サンプルサイズ」「測定基準」「研究期間」が表形式として出力されるため、研究結果を比較しやすい特徴があります。
- ③見落としの少ない検索アルゴリズム
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Elicitの検索アルゴリズムは、単なるキーワードマッチではなく、文脈を理解して関連論文を抽出します。
キーワードに現れない論文も含めて提案してくれるため、単純なデータベース検索以上の価値があると言え、「知りたいことに近い論文そのもの」を手に入れたいときに非常に有用なツールと言えます。
日本語対応の範囲
Elicitは基本的に日本語対応していません。
検索も英語前提で設計されているため、事前にDeepLなどで英訳してから入力することが推奨されます。
無料プランと有料プランの違い
Elicitの大きな強みですが、検索に関しては無料プランでも「無制限」で行うことができます。
有料プランにすることで、PDFからの抽出項目の追加や高精度モードの利用、索結果のCSVエクスポートにも対応できます。
Connected Papers — 関連論文のネットワークを可視化

おすすめポイント |
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論文同士の関連性をグラフ形式で可視化 |
クラスタ構造で研究分野のトピック分布が一目でわかる |
隠れた関連論文の発見が可能 |
複数の論文を起点にしたマルチオリジングラフ生成も対応 |
無料プランでも5件まで生成可能 |
Connected Papersは、関連論文を視覚的に図解してくれるユニークな文献探索ツールです。
特定の論文タイトルやキーワードを入力すると、関連性の高い論文がグラフ(ネットワーク図)として表示されます。
研究分野全体のトピック分布や主要な論文が直感的に理解できるようになるため、新たな研究分野の発見や先行研究調査の漏れ防止に役立ちます。
Connected Papersの強み・特徴
- ①視覚的な文献探索
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Connected Papersは、関連性の高い論文同士を視覚的に配置した図を出力します。
主要なクラスタ(研究のサブトピック)や中心的な論文が一目で確認でき、分野内の重要な研究の流れを掴むことができます。
グラフ上のノードをクリックすると、タイトル・著者・引用数・要旨が表示され、そのまま原文にアクセスすることも可能です。
また、円の大きさは被引用数を示しているため、多く引用されている論文を視覚的に知ることも可能になります。
- ②直感的な関連文献の発見
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キーワード検索だけでは見つからなかった隠れた関連論文が発見できるのが強みです。
引用関係や内容の類似度に基づいたアルゴリズムで、引用関係がないもののテーマが類似する研究を視覚化するため、「関連研究の探索漏れ」を防げます。
日本語対応の範囲
サービス自体は英語ですが、日本語キーワードや日本語論文で検索することも可能です。
そのため、日本語で書かれた論文の関連論文を出力する、ということも可能になります。
無料プランと有料プランの違い
無料プランでも基本的な機能は使うことができますが、図の作成数が月5件に制限されています。
図の作成が無制限の有料プランには「Academic」「Business」の2プランがあり、営利目的の業務内でConnected Papersを利用する場合にはBusinessプランを利用する必要があります。
【まとめ】論文検索AIで効率的なリサーチを実現!
いかがでしたでしょうか。
論文検索AIを活用することで、今まで数時間かかっていたリサーチがわずか数分で完了します。
目的に合わせて使い分けることでリサーチの効率は大きく向上しますが、特に日本語対応かつ研究に関わる機能をオールインワンで利用したい方には「SciSpace」、無料でのAI検索を何度も利用したい方は「Elicit」がおすすめです。
ぜひ、この記事が参考になり論文検索AIを活用した効率的な研究に繋がりましたら幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!